佐倉哲エッセイ集

キリスト教・聖書に関する

来訪者の声

このページは来訪者のみなさんからの反論、賛同、批評、感想、質問などを載せています。わたしの応答もあります。


  ホー   キリスト   聖書の 間違い  来訪者 の声 

K.M.さんより

99年12月16日

聖書の間違い―復活(1)--- イエスと共に復活した人々 ---」に対する反論

イエスとともに復活などしていない事実

佐倉さんの言う「多くの死人が生き返って墓から出て来て、聖なる都(エルサレム)において多くの人に現れた、というファンタスティックな物語」とは、『聖書―新共同訳』(日本聖書協会発行)の意訳の賜物です。同じ箇所の『新世界訳聖書』(ものみの塔聖書冊子協会発行)をご覧ください。

マタイによる書 27:50−54

イエスは再び大声で叫び、それからご自分の霊をゆだねられた。すると、見よ、聖なる所の垂れ幕が上から下まで二つに裂け、地は震い動き、岩塊は割れた。そして、記念の墓が開け、眠りについていた聖なる者の体が数多く起こされ、(人々は、彼がよみがえらされた後に記念の墓の間から出て来て、聖都に入ったのである)多くの人に見えるようになった。しかし、士官および共にイエスを見守っていた者たちは、地震と起きている事柄とを見て非常に恐れ、「確かにこれは神の子であった」と言った。

ご覧のとおり、『新共同訳』の「生き返った」というのは“過激な”意訳で、実際には地震が起きたことにより、墓から遺体が投げ出された、と言っているに過ぎません。近年、これと似た事件が幾つか起きました。例えば、1949年にエクアドルで、また1962年にもコロンビアのソンソンで生じており、ソンソンでは大地の激しい振動のために墓地の遺体が200体、墓から投げ出されました。―1962年7月31日付、エル・ティエンポ紙、コロンビア、ボゴダ。53節の「人々は」は、字義的には「彼らは(they)」ですが、これは複数形なので明らかに「体」ではありません。(『新世界訳聖書―参照資料付き』、脚注参照)

黙示文学

イエス・キリストご自身がダニエルの預言を受け入れていたことは、この書の信憑性を証しする証拠です。(マタイ 24:15;ダニエル 11:31) 一方、「アダムの黙示録」や「エノク書」などは新約聖書の中で一度も引用されていません。(ユダ 14,15節が「エノク書」の引用でないことは「『「ユダの手紙」の著者の無知--- 偽典を神の言葉と信じた新約聖書の著者 ---』に対する反論」の中で既に論じました。)



作者よりK.M.さんへ

00年1月16日

(1)エホバの証人の奇妙な解釈

ご覧のとおり、『新共同訳』の「生き返った」というのは“過激な”意訳で、実際には地震が起きたことにより、墓から遺体が投げ出された、と言っているに過ぎません。
『新共同訳』の翻訳のほうが定説である事実は、「エホバの証人」という閉じられら小さな社会の中でしかものごとを考えられなくなってしまった人にはわからないかも知れませんが、いくつか例を挙げておきます。
そのとき、神殿の垂れ幕が真っ二つに裂け、地震が起こり、岩が裂け、墓が開いて、眠りについていた多くの聖なる者たちの体が生き返った。そして、イエスの復活の後、墓から出て来て、聖なる都に入り、多くの人々に現れた。(新共同訳)

すると見よ、神殿の幕が上から下まで真っ二つに裂けた。そして、地が揺れ動き、岩が裂けた。また、墓が開いて、眠っていた多くの聖徒たちのからだが生き返った。そして、イエスの復活の後に墓から出てきて、聖都にはいって多くの人に現れた。(新改訳)

すると見よ、神殿の幕が上から下まで真っ二つに裂けた。また地震があり、岩が裂け、また墓が開け、眠っている多くの聖徒たちの死体が生き返った。そして、イエスの復活ののち、墓から出てきて、聖なる都にはいり、多くの人に現れた。(改訳)

視よ、聖所の幕、上から下まで裂けて二つとなり、また地震ひ、磐裂け、墓ひらけて、眠りたる聖徒の屍おほく活きかへり、イエスの復活ののち墓をいで、聖なる都に入りて、多くの人に現れたり。(文語訳)

At that moment the curtain of the temple was torn in two, from top to bottom. The earth shook, and the rocks were split. The tombs also were opened, and many bodies of the saints who had fallen asleep were raised. (墓が開いて、眠っていた多くの聖徒たちの体が甦った)After his resurrection they came out of the tombs and entered the holy city and appeared to many. (NRSV)

And behold, the curtain of the temple was torn in two, from top to bottom; and the earth shook, and the rocks were split; the tombs also were opened, and many bodies of the saints who had fallen asleep were raised,(墓が開いて、眠っていた多くの聖徒たちの体が甦った)and coming out of the the tombs after his resurrection they went into the holy cityu and appeared to many. (RSV)

At that moment the curtain of the temple was torn in two from top to bottom. The earth shook and the rocks were split. The tombs broke open and many bodies of the holy people who had died were raised to life. (墓が壊れ開き、死んでいた多くの聖なる人々たちの体が甦った)After his resurrection they came out of the tombs and entered the holy city and appeared to many. (NIV)

まだ、いくらでも例を挙げることができますが、例外はエホバの証人の造った聖書「新世界訳」の方だと言わねばなりません。もちろん、例外だからといって、それだけで、間違っていることにはなりませんが、なぜ、「生き返った」「甦った」と訳するほうが自然なのかは、コンテキストから明らかです。「眠っていた(死んでいた)」からこそ「生き返る(甦る)」のであり、「墓からでて・・・聖なる都に入り・・・多くの人に現れる」のは、どう考えても、墓の中で眠っていた(死んでいた)聖徒たちであり、彼らが「生き返った(甦った)」からこそ、「聖なる都に入る」ことができ、「多くの人に現れる」ことができたわけです。
53節の「人々は」は、字義的には「彼らは(they)」ですが、これは複数形なので明らかに「体」ではありません。
には説得力がありません。この「彼ら」はあきらかに「(よみがえった)聖徒たち」だからです。

エホバの証人がこの奇妙な解釈に固着する理由はよくわかりませんが、おそらく、例の「14万4千人」のドグマから来るのでしょう。エホバの証人のこのドグマによれば、最初の復活に預かるのが、エホバの証人の長老達を含む14万4千人の人々で、それが起こるのは1917年以後ということになっているからです。このようなドグマに執着しているために、死人の復活が二千年も前に起こった、という考えは受け入れられないのでしょう。そのため、「地震が起きたことにより、墓から遺体が投げ出された、と言っているに過ぎません」という「過激な」解釈がうまれ、その結果として

そして、記念の墓が開け、眠りについていた聖なる者の体が数多く起こされ、(人々は、彼がよみがえらされた後に記念の墓の間から出て来て、聖都に入ったのである)多くの人に見えるようになった。
という、何のことかさっぱりわからない無理な解釈になってしまったのでしょう。真理を知ることよりもすでに信じ込んでしまったドグマを正当化する信仰の恐ろしさがここに現れていると言えるでしょう。


(2)ダニエルとイエスの証言

イエス・キリストご自身がダニエルの預言を受け入れていたことは、この書の信憑性を証しする証拠です。
ダニエル書についての歴史的事実(7章以降はダニエルの名を語った他者が前2世紀に作った偽典)についてイエスが無知であったことは、イエスが神ではなく、全知でもなく、単なる人間にすぎなかったことを証明します。


(3)聖書信仰の罪

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「エノク書」などは新約聖書の中で一度も引用されていません。
これは、単なる間違いではなく、聖書信仰が強制した意図的な大うそと言わねばなりません。「エノク書」の一章九節の長い文が、そっくりそのまま、新約聖書の「ユダの手紙」に直接引用されている事実は、もうすでに、「「ユダの手紙」の著者の無知」や「作者よりK.M.さんへ」でも指摘しており、その事実を「知らなかった」とはもう言えないからです。聖書信仰というものによって、黒を白と自分自身に言いくるめ平気でいることができるとしたら、聖書信仰は真理や自己や良心に対する大いなる罪と言わなくてはなりません。

おたより、ありがとうございました。


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