僕は聖書に関しては全くの初心者です。でも、佐倉さんのページを見たり 、あまり関係ないですけど古事記やギリシャ神話についての文庫本などを 読んだりするうちに最近聖書に興味がわいてきました。ところが何を読ん でよいのかさっぱり分かりません。何か聖書を読み始めるのに取っ掛かり となるような本を紹介していただけませんでしょうか。

むかし、学生のころ、カント哲学を受講したとき、最初の日に教授が言ったことを今でも僕は忘れることが出来ません。「もしカントを理解したいと思ったら、カントの解説書を初めから読むな。カント自身の書を読んだ後、もしまだ時間があったら、もう一度カントを読め。カントを読んでよく分からなかったら、もう一度カントを読め。カントと一人で対決せよ。それからだ、他人がカントについて何と言っているか調べてみるのは。」

僕は、今でもこのアドバイスに感謝しています。

同じように、聖書そのものに、何度でも、直接向かわれることが一番よいと思います。さいわい、聖書はそんなに難しい本ではありません。学者や説教者の書いたものの目で聖書を見るのではなく、自分の目で聖書を見、自分なりに理解しようと努め、わき起こる疑問や感動を素直に大切にされるのがよいと思います。

そうして、何度も自分一人で聖書にぶつかれば、どんな解説書を自分が必要としているか、自然に分かる時期が来ると思います。

ただ二つだけ、例外があります。一つはユダヤ人の歴史に関するものです。聖書はユダヤ人の歴史と深く関わっています。しかし、聖書だけでは、それを何度読んでも、イスラエル・ユダヤの歴史の全体像が見えません。ユダヤ人の歴史に関する書物は必要かと思います。もう一つは、聖書辞典です。聖書の中には沢山の特殊用語がありますから、用語や人名の簡単な説明のある聖書辞典を一つでも持たれるとたいへん役立ちます。

最後に、翻訳聖書です。僕自身は手に入る聖書は全て手に入れる、という主義ですが、出来れば、複数の翻訳聖書を持たれることがよいかと思います。少なくとも一冊は、アポクリファ(旧約外典)を備えた聖書を持たれることをお勧めします。