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言の葉

(25)


わたくしはこのように聞いた。あるとき尊師(ブッダ)は、サーヴァッティー市で、ジェータ林の園にとどまっておられた。そのとき、悪魔・悪しき者は尊師に近づいた。近づいてから、尊師のもとで、この詩句を唱えた。

子ある者は子について喜び、また牛のある者は牛についてよろこぶ。
人間の喜びは、執着する依りどころによって起こる。
執着する依りどころのない人は、実に、喜ぶことがない。
(尊師いわく、)
子ある者は子について憂い、また牛のある者は牛について憂う。
人間の憂いは、執着する依りどころによって起こる。
執着する依りどころのない人は、憂うることがない。
そこで、悪魔・悪しき者は、「尊師はわたしのことを知っておられるのだ。幸せな方はわたしのことを知っておられるのだ」と気づいて、打ち萎れ、憂いに沈み、その場で消え失せた。

--- 『サンユッタ・ニカーヤ経典』(中村元訳) ---