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言の葉

(6)


わが弟子たちよ、われ今よりは、独り行んとする! なじんらもまた独り行け! かくわれは希う。 まことに、われなんじらに勧める。われより去れ。ツァラトストラより自己をふせげ! さらになすべきは、ツァラトストラを恥よ! われはなんじらを欺いたかも知れぬではないか。 認識の人間は、ただにその敵を愛するのみにはあらず、さらに、その友をも憎みうる者たるを要する! ついに門下としてのみ已むは、よく師に報ずるの所以ではない。しかるに、いかなればなんじらは、わが花冠を取り去ろうとしないのであるか? なんじらはわれを崇拝する。さあれ、なんじらの尊崇がひとたび覆ったときには如何であるか! 心せよ、うち倒れる神像によって、なんじらが砕かれざらんことを! なんじらは言う、ツァラトストラを信ずる、と。されど、そもツァラトストラが何であるか! なんじらはわが信徒である。されど、そも一切の信徒が何であるのか! なんじらは未だ自己を求めざる時に、われに遭遇した。すべての信徒はかくなす。この故にこそ、一切の信仰はかくも見すぼらしい。 今や、われなんじらに命ずる。われを棄て、なんじら自ずからを発見せよ、と。かくて、なんじらすべてがわれを否定したとき、われはなんじに復帰するであろう。 まことに、同胞よ、その時は、われはわが喪失せる者たちを、異なれる眼をもって探索するであろう。その時は、われなんじらを、異なれる愛を持って愛するであろう。

ニーチェ、『ツァラトストラはかく語りき』竹山道雄訳