佐倉哲エッセイ集

日本と世界に関する

来訪者の声

このページは来訪者のみなさんからの反論、賛同、批評、感想、質問などを載せています。わたしの応答もあります。


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上田彰さんより
98年1月11日

「新憲法制定」。実は、gooの検索で「政教分離」「アメリカ合衆国憲法」で引っかかってこのページのことを知りました。最初は創価学会の憲法20条観について調べたかったのですが。

日本国憲法における(個人の)人権思想はアメリカにはないじゃないかというのは、ああそうかも、という感じです。封建制からの解放という課題があったからだと思います。アメリカでは「自由」といえば、近代では共同体的自由を指すので、いきなりcivil rightsになっちゃうように思います。ここら辺の話はA.D.リンゼイの「民主主義の本質」が自分にとって参考になりました。まあでも内政では使わないHuman rightsを外交では使うってやっぱりアメリカって嫌らしい国ですね。そういえば、アメリカが人類普遍の原理を普遍の形態のままで押しつけたというよりは、やはり日本の固有の事情にあわせて個別に対応していると思うのですが。

単純に知識の問題なので質問させていただきたいのですが、トーマス・ジェファソンがキリスト教徒の代表みたいにいわれていますが、学校の授業では「合理論・啓蒙主義的無神論者ないし教会にそれほど熱心ではなかった人」という風に習ったので、彼の宗教的信条がキリスト教的であるという資料があれば、教えてください。


(なお、聖書やキリスト教に関する上田さんのご投稿はこちらです。)


作者より上田彰さんへ

98年1月31日

トーマス・ジェファソンがキリスト教徒の代表みたいにいわれていますが、学校の授業では「合理論・啓蒙主義的無神論者ないし教会にそれほど熱心ではなかった人」という風に習ったので、彼の宗教的信条がキリスト教的であるという資料があれば、教えてください。
彼が無神論者であったというのは明らかに間違っています。しかし、かれが教会にそれほど熱心ではなかったというのは本当です。かれが教会に行かなかったというわけではありません。たとえば、かれはフィラデルフィアの「Christ Church」にはジョージ・ワシントンやフランクリンなどと参拝しています。ただ、彼は聖職者のことをあまりよく書いていません。かれは、しばしば「キリスト教会の腐敗」を指摘し、「イエスの教え」("the precepts of Christ")に従うことがクリスチャンにとってもっとも大事なことであるとしばしば語っています(たとえば、1803年4月21日付けのベンジャミン宛の手紙)。彼はとくに諸教会の派が分かれて言い争う状態を嫌っていたようです(1814年9月26日マイルス・キング宛の手紙)。おそらくそのために、彼は特定の教会に所属しなかったのでしょう。しかし、彼は自分についてはいつでも「わたしはクリスチャンである」とはっきり語っています。それは生涯変わっていません。彼が生涯愛読して、ぼろぼろになったバイブルには沢山の書き込みが残されていて、たとえば次のようなことが書き込まれているそうです。
わたしは真のクリスチャンであって、イエスの教えに従う弟子である。

イエスの教えは素朴でしかも人類を幸福に導く。

神は唯一であり、完全である。

未来における賞罰はある。

心から神を愛し、自分を愛するように隣人を愛することがすべてである。

わたしは、やがて全国民がわれらの創造主の統一の下に集うであろうことを疑わず、イエスの純粋な教えに導かれることを望むものである。

もし、イエスの教えが、彼が語ったそのままの純粋な形でのべ伝えられていたなら、すべての文明はすでにクリスチャンになっていたであろう。

(以上、William J. Federer, AMERICA'S GOD AND COUNTRY: Encyclopedia Of Quotationsより)

また、彼はいろいろな祈りをのこしていますが、彼は「主イエス・キリストの名によって・・・全能なる神」に祈りをささげました(たとえば、1805年3月4日「平和のための祈り」)。

このように、彼が神を信じていたこと、彼が(教会員という意味ではなく、イエスの弟子という意味の)クリスチャンであったこと、は疑う余地がありません。

なお、彼の宗教思想を知るには、彼が残した膨大な量の個人的な書簡がもっとも便利ではないかと思います。

The Writings of Thomas Jefferson 20 vols (Washington, D.C.: The Thomas Jefferson Memorial Association)

Jefferson Writings, Merrill D. Peterson, ed., (NY: Literary Classics of the United States, Inc.)

Norman Cousins, In God We Trust -- The Religious Beliefs and Ideas of the American Founding Fathers(NY: Harper & Brothers)

John Eidsmoe, Christianity and the Constitution -- The Faith of Our Founding Fathers(Grand Rapids, MI: Baker Book House)

おたよりありがとうございました。



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