聖書の間違い

縄文人はノアの子孫か?

佐倉 哲


聖書のノアの物語によれば、約四千四百年前の大洪水でノアの家族以外は人類はすべて滅亡し、現在の人類はすべてノアの子孫ということになっています。しかし四千四百年前といえば、日本では縄文時代の中期です。そこで、聖書の物語を信じれば、そのとき縄文人は一挙に滅亡し、そのあと、ノコノコと中近東からノアの子孫がやってきて縄文時代の伝統を継承して発展させていったという、ほとんど不可能な日本歴史解釈となってしまいます。



人類はすべてノアの子孫?

聖書によると、約四千四百年前に、神は大洪水によって人類を滅ぼしてしまい、ノアの家族八人だけが箱舟に乗って 助かったことになっています。そして、地上の諸民族は全てこのノアの家族を祖先としている、と記しています。

創世記 9:18-19
箱舟から出たノアの息子は、セム、ハム、ヤペテであった。ハムはカナンの父である。この三人がノアの息 子で、全世界の人々は彼等から出て広がったのである。


そのころ日本では

ところで、四千四百年前というと、日本では縄文時代の中期にあたります。聖書の記述を歴史的事実だと仮定すると、縄文時代の中期にそれまでの縄文人は突然洪水によって地上から消え去り、ノアの息子から出た子孫が中近東 から日本列島まではるばるやって来て、しかも滅ぼされたはずの縄文人の文化を受け継いで発展させた、というほとんど不可能な日本史の解釈をしなければならなくなります。そもそも、縄文時代の中期に、日本列島をすべて水中に埋め るほどの洪水があったという痕跡はまったくないし、縄文土器の編年研究によって明らかなように、縄文文化は連続的に発展していて、縄文時代の中期に人種の入れ替わりによる文化の断絶があったという形跡などまったくありません。例えば、火炎式土器の変化を見ると、それが過去の形を受け継ぎながら、緩やかな発展をしていったことが明白にわかります。日本の縄文遺跡は聖書の記述の歴史的間違いを証明していると言えるかも知れません。

縄文時代聖書の記録
前10000 - 8000年草創期
前8000 - 4000年早期アダムの創造
前4000 - 3000年前期
前3000 - 2000年中期ノアの洪水
前2000 - 1000年後期
前1000 - 300年晩期